2026年5月6日水曜日

ネモフィラの海から、黒猫がのぞいた日

ネモフィラの海から、黒猫がのぞいた日

青いネモフィラが、丘いっぱいに咲いていた。

空の青が、そのまま地面に降りてきたような景色だった。

風が吹くたびに、小さな花たちは少しだけ揺れて、まるで青い波のように見えた。

そこに、黒猫がいた。

といっても、堂々と歩いていたわけではない。

ネモフィラの花のあいだから、顔を少しだけ出していた。

耳をぴんと立てて、目だけでこちらを見ている。

青い花畑の中に、ぽつんと黒い影。

それが不思議なくらい、景色に馴染んでいた。

黒猫は、何かを探しているようにも見えた。

ただ静かに、春の終わりの空気を感じているようにも見えた。

人の声も、建物も、余計なものは何もない。

あるのは、青い花と、空と、少しだけ顔を出した黒猫だけ。

それだけなのに、なぜか物語が始まりそうだった。

黒猫はきっと、この花畑の小さな番人なのかもしれない。

ネモフィラがきれいに咲く季節だけ、そっと姿を見せる。

そして、花を見に来た人の心が少し疲れていたら、何も言わずに見つめてくれる。

「急がなくてもいいよ」

そんな声が聞こえたような気がした。

青い花畑は、見ているだけで心が落ち着く。

その中から黒猫が少し顔を出しているだけで、景色にやさしい温度が生まれる。

きれいなだけではなく、少し可愛くて、少し不思議で、少しだけ物語がある。

こういう一枚は、ずっと眺めていたくなる。

春の終わりに見つけた、青い丘の小さな秘密。

ネモフィラの海の中で、黒猫は今日も静かに顔を出している。


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