空は、どこまでも青く澄んでいた。
夏の光を受けた海は、細かな宝石を散りばめたように輝き、白い砂浜へ静かな波を届けている。
その海の中には、大きな白い鳥居が立っていた。
長い年月を過ごしてきたようにも見えるのに、潮にも風にも汚されず、青い世界の入り口を守るように佇んでいる。
浜辺では、白と淡い水色の衣をまとった和風エルフの女性が、鳥居の向こうを見つめていた。
夏の風が吹くたびに、長い黒髪と透き通るような袖が同じ方向へなびく。
彼女の隣には、一匹の黒猫が座っていた。
黒猫もまた、何かを待っているように海を見つめている。
けれど、船が来る気配はない。
誰かが鳥居をくぐる様子もない。
聞こえるのは、波の音と風の音だけだった。
もしかすると、白い鳥居の向こうには、普段の世界からは見えない場所があるのかもしれない。
悲しい記憶を海へ返す場所。
忘れていた願いを思い出す場所。
そして、立ち止まった心が再び歩き始める場所。
女性は鳥居へ向かって進むことも、浜辺から離れることもしなかった。
ただ、今だけは急がなくてもいいと知っているように、静かな夏の海を眺め続けていた。
黒猫の耳が、風に合わせて小さく動く。
その瞬間、遠い鳥居の向こうで、白い光がわずかに揺れたように見えた。
夏の青い世界には、ときどき説明のつかない美しさが現れる。
それは幻だったのかもしれない。
けれど彼女と黒猫にとっては、新しい季節へ続く、小さな合図だった。
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