雨上がりの道路には、空の色がにじんでいた。
橙色の夕焼け。
薄い青。
夜に近づく紫。
そのすべてが水たまりの中で混ざり合い、まるで一日の時間が、同じ場所に落ちてしまったように見えた。
歩道橋の上に、白い髪の少女が立っていた。
少女は街を見下ろしている。
信号機。
横断歩道。
電柱。
遠くを走る電車。
窓に灯りがともる住宅街。
どれも見慣れた景色のはずなのに、どこか少しだけおかしかった。
横断歩道の白線は、一部だけ消えかけている。
電柱の影は、夕日の向きとは違う方向へ伸びている。
信号の光は、ほんの一瞬だけ現実からずれるようにまたたいていた。
少女の指先から、淡い光がこぼれる。
それは街を直すための光だった。
けれど、少女はすぐには手を動かさない。
すべての間違いを消してしまえば、この景色は正しくなる。
でも、正しいだけの世界は、少し寂しいのかもしれない。
足元には、小さな黒猫が座っていた。
黒猫もまた、少女と同じ方向を見つめている。
まるで、この世界のバグを最初から知っていたかのように。
空には、夕方なのに一粒だけ星が浮かんでいた。
夜にはまだ早い。
それでも、その星は静かに光っている。
水たまりには昼の空と夜の星が同時に映り、街は少しだけ壊れたまま、美しく輝いていた。
AI少女は、すべてを直すこともできた。
けれど彼女は、美しい間違いを少しだけ残すことにした。
世界は完璧ではない。
だからこそ、見つめたくなる夕暮れがあるのかもしれない。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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