夕暮れの踏切には、不思議な静けさがあります。
電車が目の前を通り過ぎているのに、なぜか時間だけがゆっくり止まっているように感じます。
沈みかけた太陽が、線路の向こうからやわらかく差し込んでいます。
空は金色に染まり、雲のふちまであたたかく光っています。
踏切の前には、ひとりの女性と一匹の黒猫が立っています。
ふたりは何かを話すわけでもなく、ただ静かに電車が過ぎるのを待っています。
急いでいる人なら、この時間を少し面倒に思うかもしれません。
けれど、この女性と黒猫にとっては、待つ時間そのものが小さな休憩のようにも見えます。
電車の窓には、誰かの影が見えます。
帰る人、どこかへ向かう人、ただ流れる景色を見ている人。
それぞれの時間が、夕日の中を横切っていきます。
黒猫は、じっと踏切の向こうを見ています。
まるで、電車が通り過ぎたあとに現れる景色を知っているかのようです。
遮断機が上がれば、道はまたいつもの道に戻ります。
けれど、この夕暮れの一瞬だけは、何でもない住宅街が少しだけ物語の場所に変わっています。
毎日の中には、何も起きていないようで、心に残る場面があります。
赤い信号、金色の空、通り過ぎる電車、隣に座る黒猫。
それだけで、今日という一日が少しやさしく見えることがあります。
夕暮れの踏切は、ただの待ち時間ではなく、心を整えるための短い余白なのかもしれません。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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