2026年4月17日金曜日

キツネの親子が見つめていたもの

キツネの親子が見つめていたもの

山の奥に、ずっと誰も来なくなった神社がある。
石段は落ち葉に覆われ、鳥居の赤は少しずつ時間に削られていた。

けれど、不思議と荒れている感じはしない。
ただ、忘れられているだけの場所。

その静かな場所に、キツネの親子がいた。

親ギツネはじっと前を見つめ、
子ギツネはその隣で、小さく体を寄せている。

何かを待っているようにも、
何かを見送っているようにも見えた。

鳥居の奥には、ほとんど見えないほどの光が揺れている。
人の形のようで、そうでないような、淡い気配。

怖さはない。
むしろ、どこか懐かしい。

ここには、確かに人がいた。
笑って、願って、祈っていた時間があった。

その記憶だけが、まだ消えずに残っている。

キツネたちは、それを知っているのかもしれない。

言葉にはならないものを、ただ静かに見つめている。
それが、この場所の役目のように。

風もなく、音もなく、時間だけがゆっくりと流れる。

忘れられた神社で、
それでも消えなかったものだけが、そこにあった。

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