山の奥に、ずっと誰も来なくなった神社がある。
石段は落ち葉に覆われ、鳥居の赤は少しずつ時間に削られていた。
けれど、不思議と荒れている感じはしない。
ただ、忘れられているだけの場所。
その静かな場所に、キツネの親子がいた。
親ギツネはじっと前を見つめ、
子ギツネはその隣で、小さく体を寄せている。
何かを待っているようにも、
何かを見送っているようにも見えた。
鳥居の奥には、ほとんど見えないほどの光が揺れている。
人の形のようで、そうでないような、淡い気配。
怖さはない。
むしろ、どこか懐かしい。
ここには、確かに人がいた。
笑って、願って、祈っていた時間があった。
その記憶だけが、まだ消えずに残っている。
キツネたちは、それを知っているのかもしれない。
言葉にはならないものを、ただ静かに見つめている。
それが、この場所の役目のように。
風もなく、音もなく、時間だけがゆっくりと流れる。
忘れられた神社で、
それでも消えなかったものだけが、そこにあった。
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