2026年4月23日木曜日

月の光が届いた場所

月の光が届いた場所

暗闇の中で、世界はほとんど音を失っている。

苔むした石と、湿った土の匂い。
長い時間をそのまま閉じ込めたような、小さな空間。

その静けさを破るように、
一本の光が、すっと差し込んでくる。

月の光だった。

まっすぐではない。
やわらかく、少し揺れながら、
それでも確かにここへ届いた光。

その中心に、
小さな命が立っている。

子ダヌキは、じっと見上げている。

まだ知らない世界を。
まだ触れていない何かを。

その目には、
ただの光じゃないものが映っている気がした。

遠くで見守る存在がいることにも、
たぶん、ちゃんと気づいている。

すぐ後ろ。
闇の中に溶けるように、
静かに、確かにそこにいる母の気配。

前に出る勇気と、
後ろにある安心。

そのあいだにある、
ほんの一歩の距離。

きっと、あの光は特別なものじゃない。

ただの月明かり。

でも、
それを「特別にしてしまう瞬間」がある。

踏み出したとき。
見上げたとき。

そして、
見守られていると気づいたとき。

そのとき、世界は少しだけ変わる。

暗闇はそのままなのに、
光だけが、やけに鮮明になる。



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