暗闇の中で、世界はほとんど音を失っている。
苔むした石と、湿った土の匂い。
長い時間をそのまま閉じ込めたような、小さな空間。
その静けさを破るように、
一本の光が、すっと差し込んでくる。
月の光だった。
まっすぐではない。
やわらかく、少し揺れながら、
それでも確かにここへ届いた光。
その中心に、
小さな命が立っている。
子ダヌキは、じっと見上げている。
まだ知らない世界を。
まだ触れていない何かを。
その目には、
ただの光じゃないものが映っている気がした。
遠くで見守る存在がいることにも、
たぶん、ちゃんと気づいている。
すぐ後ろ。
闇の中に溶けるように、
静かに、確かにそこにいる母の気配。
前に出る勇気と、
後ろにある安心。
そのあいだにある、
ほんの一歩の距離。
きっと、あの光は特別なものじゃない。
ただの月明かり。
でも、
それを「特別にしてしまう瞬間」がある。
踏み出したとき。
見上げたとき。
そして、
見守られていると気づいたとき。
そのとき、世界は少しだけ変わる。
暗闇はそのままなのに、
光だけが、やけに鮮明になる。
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