その水滴に、触れてはいけない気がした。
理由はわからない。
でも、わかってしまうような静けさがあった。
世界は、止まっている。
風も、音も、光さえも。
葉の先から落ちるはずだった水滴は、
空中でぴたりと止まり、
まるで時間そのものを閉じ込めたように輝いていた。
彼女は、ただ静かに手を差し出す。
触れるためではなく、確かめるように。
その距離は、ほんの数センチ。
けれどその瞬間、
水滴の表面に、細い光の亀裂が走った。
パリン、と音が聞こえた気がした。
実際には、音なんて存在しないはずなのに。
気づけば、空間そのものにもヒビが広がっている。
見えないガラスに、無数の傷が走るように。
まだ壊れてはいない。
でも、もう戻れない。
彼女は、触れていない。
それでも世界は、壊れはじめている。
――まるで、何かを知ってしまったかのように。
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