夜の街は、静かだった。
音がないわけじゃないのに、なぜかすべてが遠く感じる。
足元の石畳は冷たくて、
時間だけがゆっくり流れているみたいだった。
ふと見下ろした街には、
普通とは少し違う光景が広がっている。
建物は暗いまま、ただそこにあるだけで、
灯りはどこにも属さず、空中に浮かんでいた。
まるで、この街の「記憶」だけが残っているみたいに。
光は整然と並んでいて、
道の形や、建物の配置をなぞるように漂っている。
でも、それは人の気配ではなくて、
どこか距離のある、やさしい残像のようだった。
遠くを見つめながら、
この光が「今」なのか「過去」なのか、わからなくなる。
ただひとつ確かなのは、
この静けさが、心にやさしく触れてくることだけ。
夜は、なにも語らない。
でも、なにも語らないからこそ、
こちらの中にあるものが、ゆっくり浮かび上がってくる。
この街の灯りみたいに。
気づけば、少しだけ呼吸が深くなっていた。
それだけで、十分な夜だった。
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