その建造物には、入り口も、窓も、人が介在した痕跡さえも存在しない。
ただ、物理法則をあざ笑うかのように、
垂直方向へと異様に引き伸ばされた木材と石の塊が、夕闇の空を鋭く切り裂いている。
かつて誰が、何のために、この「天に届く絶望」を築き上げたのか。
見上げるほどに視界は霧に霞み、その頂(いただき)は神話の領域へと消えていく。
建物の足元に佇む彼女もまた、この広大な静寂の一部でしかなかった。
黒髪を夜風に遊ばせ、こめかみに微かな光を宿したその瞳は、瞬きもせず巨大な構造体を見つめている。
彼女はこの場所の「観測者」なのか、それとも、この非人間的なスケールを維持するための「鍵」なのか。
風の音だけが、意味を持たない歴史を語り継ぐ。
圧倒的な質量を誇る和風の塔は、答えることなく、ただそこにある。
まるで最初から、人類が理解できる範疇など超越していたと言わんばかりに。
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